〜社用車の事故リスクや従業員の負担を軽減する方法〜
企業活動において、「人の移動」は欠かせない業務のひとつです。従業員の送迎や来客対応、取引先への訪問など、社用車を利用した業務は日常的に行われています。
しかし近年、これらの送迎業務を自社で完結することのリスクや非効率性が指摘されるようになり、外部委託(アウトソーシング)を選択する企業が増加しています。特に注目されているのが、「万が一の交通事故に備えた体制整備」や「従業員の業務負荷軽減」です。
本記事では、送迎業務をアウトソーシングすることによって得られるメリットや、事故発生時の対応体制、さらに企業側のリスク回避策としての有効性について詳しく解説します。
1. 企業が直面する社用車運用のリスクと課題
企業が社用車を用いて送迎を自社内で実施している場合、以下のような問題が発生する可能性があります。
● 従業員の負担が大きい
送迎業務を担っているのが本来別業務を担当している従業員であることも多く、運転業務が本業の時間を圧迫することがあります。たとえば、営業担当者が来客の送迎を担当した場合、提案準備や資料作成などに割く時間が削られてしまうなど、本来のパフォーマンスに支障をきたすケースも考えられます。
● 万が一の事故で企業に責任が及ぶ
従業員が社用車を運転中に事故を起こした場合、事故の責任は個人だけでなく企業側にも及びます。民法上、「使用者責任(民法第715条)」が適用され、企業は加害者である従業員と連帯して損害賠償責任を問われることになります。
● 事故処理に時間・費用・労力がかかる
事故後の対応は非常に煩雑です。事故の初動対応、相手方とのやり取り、保険会社との調整、社用車の修理や代替車両の手配など、多くの手間がかかります。特に人的被害を伴う事故の場合、解決までに長期間を要することもあり、企業にとって大きな負担となります。
2. 送迎業務のアウトソーシングがもたらすメリット
こうしたリスクや課題を回避するため、送迎業務のアウトソーシングが注目されています。以下に、外部委託によって得られる代表的なメリットを紹介します。
● 本来の業務に集中できる
送迎業務を委託することで、従業員は本来の職務に専念できるようになります。運転やスケジュール管理に煩わされることがなくなり、業務の効率性が向上します。これは、結果的に企業全体の生産性向上にもつながります。
● 事故時の対応を委託会社に任せられる
委託契約を結んだ業者が業務中に交通事故を起こした場合、その場での初期対応や保険対応、相手方との交渉、警察への届出などは、基本的にすべて委託会社側が対応します。企業が直接対応に追われることはなく、安心して業務を委ねることができます。
● 委託業者による保険適用
多くの委託業者は「管理請負自動車保険」などに加入しており、事故による損害賠償や修理費は保険から補償されます。企業側が直接補償費用を負担するリスクが低減されるのも、外部委託の大きな利点です。
3. 委託業者による事故発生後の対応体制
実際に委託業者が事故を起こした場合、以下のような流れで対応が行われます。
● 初動対応
事故現場での救護・警察連絡・保険会社への報告など、事故発生直後の対応は、すべてドライバーと委託業者が対応します。
● 損害賠償の負担
加害事故となった場合、相手方への損害賠償請求にも対応する必要があります。通常、契約している保険が適用され、委託業者が補償金の支払いを行います。
● 代替ドライバーや車両の手配
事故によってドライバーが業務不能になったり、車両が破損して使えなくなった場合でも、代替ドライバーや車両を迅速に手配する体制が整っている委託会社も多く、翌日以降の送迎スケジュールに支障をきたす心配はほとんどありません。
4. 社用車で事故が起きた場合の企業側のリスク
送迎業務を社内で運用し続ける場合、以下のようなリスクが避けられません。
- 被害者から企業への損害賠償請求
- 保険の未加入・不足による自費補償
- 社内での事故対応にかかる時間的・精神的コスト
- 社会的信用の低下(重大事故の場合、報道されることも)
これらのリスクは、企業規模や業種にかかわらず、すべての事業者に共通するものです。交通事故は「誰にでも起こり得るもの」であり、万が一の事態に備える体制整備は不可欠です。
5. まとめ:送迎業務の外部委託は業務効率と企業リスクの両方を改善する
社用車による送迎業務を自社で管理する場合、業務効率の低下、従業員の負担増加、そして交通事故による企業責任という3つの大きな課題に直面します。
これらを回避する手段として、送迎業務の外部委託は非常に有効な選択肢となります。
事故発生時の初動対応から、損害賠償、保険処理、代替手段の確保まで、委託会社が一貫して対応するため、企業側の負担を大幅に軽減することができます。
また、従業員が本来の業務に専念できることで、全体の生産性や業務効率も改善され、企業にとって大きなメリットが得られます。
今後、企業の安全管理やリスクマネジメントの観点からも、送迎業務のアウトソーシングはより一般的な選択肢となっていくでしょう。
コメント