オンデマンド交通とは?予約制乗合システムの導入メリットと事例を解説

オンデマンド交通とは、予約制の乗り合い交通システムです。

近年、特に地方を中心に導入が進んでおり、その柔軟性から注目を集めています。

本記事では、オンデマンド交通の定義、種類、導入する目的とメリット、実際の導入事例、そして利用定着に向けた課題について詳しく解説します。導入を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。


オンデマンド交通の基本

オンデマンド交通は、タクシーとバスの利点を組み合わせた交通システムです。時刻、場所、路線の全て、もしくは一部に柔軟性を持たせ、複数の利用者が乗り合いで目的地へ移動できるのが特徴です。

公共交通機関の整備が進んでいない地域では、路線バスを廃止・縮小し、オンデマンド交通へ切り替えるケースが増加しています。「デマンド交通」「乗合タクシー」「オンデマンドバス」などとも呼ばれますが、これらは基本的にオンデマンド交通と同様の公共交通サービスを指します。

組み合わせ別4種類の運行システム

オンデマンド交通は、路線の設定方法によって主に以下の4種類に分類されます。

システム名路線設定時刻設定予約の有無特徴
Fixed固定固定予約あり予約が入った場合のみ運行する、予約制バスに近い形態。
Route Deviation固定+迂回固定予約あり通常の固定路線に加えて、予約があれば迂回して走行する。
Semi-Dynamic起点・終点のみ固定始点出発時刻のみ固定予約ありルートの大部分は予約に応じて柔軟に運行される。
Dynamic非固定(利用者により決定)非固定(利用者により決定)予約あり時刻表や路線が固定されず、乗合タクシーに近い形態で運行。

タクシーとの違い

オンデマンド交通とタクシーの主な違いは、移動範囲予約・乗合の必須性です。

オンデマンド交通は、路線を指定しないシステムもありますが、多くの場合特定の地域内での移動を目的としており、タクシーのように距離に関係なく広範囲を移動することは想定していません。

また、オンデマンド交通は予約が必須であり、事前に決められた方法で予約をしなければ乗車できません。さらに、個別利用は不可で、他者との乗合が基本となります。この点で、オンデマンド交通は「時刻表・路線が柔軟なバス」または「地域限定の乗合タクシー」という、バスとタクシーの中間的な位置づけにあります。


オンデマンド交通導入の目的とメリット

利用客のニーズに合わせて柔軟に対応できるオンデマンド交通は、地域社会に多くのメリットをもたらします。

高齢者や観光客の移動手段の確保

公共交通機関が不十分な地域では、オンデマンド交通が観光客の移動手段としての役割を果たします。また、高齢者の買い物や通院などの日常生活における移動手段としても有効です。

従来のバスや鉄道は通勤・通学には便利でも、高齢者にとっては停留所から目的地までの移動が負担になることがあります。オンデマンド交通を導入することで、自宅近くや目的地近くまで移動が可能となり、「買い物難民」と呼ばれる方々の生活を支えることが期待できます。

交通機関(バス・タクシー会社)の支援

バス会社やタクシー会社がオンデマンド交通を導入することで、新たな利用客の増加が見込めます。

実際に、従来の路線を廃止してオンデマンド交通を導入した地域では、従来の路線バスの利用者数を上回るケースもあります。従来の路線では対応できなかった地域間移動や、地域施設への移動が増えることで、全体の利用者が増加傾向にあります。

都市部における環境問題への貢献

オンデマンド交通の乗合という特徴は、都市部の課題解決にも役立ちます。

観光地などでの移動にタクシーを利用する方が多い中、オンデマンド交通を利用することで1台で複数の利用者に対応でき、渋滞の緩和排気ガスの削減といった環境問題への取り組みにもなります。

そのため、過疎地域だけでなく、都市部でも新たな交通手段として活用されています。また、乗合による利用料金の安さも利用者にとって大きなメリットであり、高齢者だけでなく、観光目的の若者や家族連れなども料金面から利用しやすい環境を整えることが可能です。

データ活用による町づくりへの貢献

オンデマンド交通は、予約情報や運行情報を管理するため、他の地域サービスと連携しやすいという利点があります。

例えば、地域の医療機関と連携し、定期通院の予約日時を基に自動で乗車予約を手配するサービスなどを導入することで、利用客の利便性向上と増加が見込めます。

また、乗客のデータを分析することで、利用者の行動パターンや習慣を把握し、地域全体の傾向をつかむことが可能になります。単なる交通手段としてだけでなく、オンデマンド交通の導入は、個人に適したサービスの展開や、便利で安心な町づくりの推進に発展させられるのです。


三重県玉城町の導入事例

三重県玉城町では、1996年に民間バス会社の路線が大幅に縮小されたことを受け、翌年から自治体主導で路線バスを運行していました。しかし、29人乗りバスを1日19便運行しても平均乗客数は約4.5人と低迷していました。

そこで2009年にオンデマンド交通を導入しました。運行は毎日午前9時~午後5時の間で、町内にある170箇所のバス停間を移動でき、料金は無料としました。予約は電話またはインターネットで、利用の30分前まで受け付ける体制です。

導入後、登録者は毎月増加し、2016年6月1日時点では1日あたり約110人が利用しています。主な乗降場所は町の中心部にある保健福祉会館で、近隣にはドラッグストアやスーパーが立ち並ぶため、地域の生活移動手段として活躍しています。

また、従来の路線バスでは未対応だった地域への移動も確認されており、交通空白地域・不便地域の解消に役立っていると言えます。玉城町の事例からもわかるように、従来の路線バスの廃止・縮小を機にオンデマンド交通を導入することで、これまでバスを利用しなかった層の利用を積極的に促すことが可能です。


利用定着に向けた重要な取り組み

オンデマンド交通の導入における大きな課題は、認知度向上利用の定着です。利用定着へ向けた代表的な取り組みを3つ解説します。

広報活動の徹底

まず、オンデマンド交通がどのようなサービスかを地域住民に知ってもらう必要があります。導入を開始しても認知されていないという問題は少なくありません。

認知度を高めるためには、地域広報へのチラシの挟み込みや、自治会を通じての利用促進などが挙げられます。バス・タクシー・鉄道に代わる新しい移動手段の一つとして理解を得ることが重要です。利用方法や予約方法を分かりやすく記載することも欠かせません。

体験乗車の実施

初めて利用するものに抵抗を感じる方も多いため、体験乗車会の実施は有効です。利用のハードルを下げるために体験会を行うことで、利用者の増加が見込めます。

保健福祉会館や地域のスーパーなどと連携して行うことで、集客効果も期待できます。バスよりも身近で乗りやすい交通手段として認知してもらうことが重要です。

地域との継続的な連携

広報活動や体験乗車とも関連しますが、地域のスーパーや医療施設との連携は、利用定着に大きく繋がります。

特に保健福祉会館や医療施設は定期的に通う方が多いため、従来のバスやタクシーではなくオンデマンド交通の利用を促してもらうことや、通院に合わせて予約が自動でできるシステムを導入するなどが有効です。


まとめ:オンデマンド交通導入は大きなメリットがある

オンデマンド交通は、予約制の乗合交通システムであり、利用者、地域、導入企業にとって非常に大きなメリットをもたらすシステムです。

導入には、予約受付方法の検討、運行エリア・乗降地点の決定など、さまざまなシステム構築が必要になります。ぜひ地域課題の解決と活性化のために、オンデマンド交通の導入を検討してみてください。

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