通所系サービスにおいては、利用者の利便性確保の観点から送迎サービスの実施が基本とされています。これらのサービスで送迎を実施しない場合、介護報酬の算定において送迎減算が適用されます。
送迎減算の適用を避け、かつ利用者の利便性を維持するために送迎サービスを導入している事業所は多いですが、人手不足や運転の苦手なスタッフがいる施設にとって、送迎業務の負担は無視できません。
本記事では、送迎減算の詳細、適用対象となるサービス種別、および送迎業務の負担を軽減する方法について詳しく解説します。
送迎減算の定義と適用条件
送迎減算とは、通所系サービスにおいて送迎を実施しなかった場合に適用される介護報酬の減算のことです。
通所系サービスで送迎を実施する場合、個別サービス計画において片道または往復の送迎を位置づけます。この計画で送迎を行うとされているにもかかわらず、実際に送迎が実施されなかった場合が減算の対象となります。利用者側から見れば、送迎を利用しなかった分の費用を支払う必要がない仕組みと言えます。
過去には、事業所と同一の建物から通う利用者のみが減算対象でしたが、この規定が抜け道として利用される実態があったため、現在では実際に送迎を行ったかどうかによって減算の適用が決まる運用になっています。
送迎減算が適用されるサービスと単位数
送迎減算が適用されるのは、以下の「通所系」と呼ばれる福祉サービスのうち4つのサービス種別です。
| 介護サービス種別 | 単位数(片道ごと) |
| 通所介護 | -47単位 |
| 地域密着型通所介護 | -47単位 |
| (介護予防)認知症対応型通所介護 | -47単位 |
| 通所リハビリテーション | -47単位 |
送迎を実施しなかった場合、片道ごとに決められた単位数が減算されます。つまり、往復ともに送迎をしなかった場合には2回分(-94単位)が減算される計算です。
送迎減算に関するQ&A
送迎減算について、事業所が疑問に感じやすい質問と回答をまとめました。
Q1. 徒歩で送迎した場合に送迎減算は適用されますか?
A. 適用されません。
送迎に必ず車両を用いなければならないという規定はありません。スタッフが徒歩であっても送迎を実施していれば、送迎減算は適用されません。
Q2. 宿泊サービスを利用した場合、送迎減算はどうなりますか?
A. 送迎を行っていない場合は適用されます。
利用者が宿泊サービスを利用したかどうかにかかわらず、実際に送迎が行われていない場合には送迎減算が適用されます。
Q3. 送迎の予定があったが、結果的に送迎しなかった場合はどうなりますか?
A. 送迎減算が適用されます。
送迎減算は、送迎の予定があったかどうかではなく、実際に送迎を行ったかどうかで適用が決まります。例えば、送迎の予定があり自宅まで迎えに行ったものの、利用者が何らかの事情で送迎サービスを利用せず、家族が車で送迎したというような場合にも送迎減算は適用されます。
Q4. 事業所と同一の建物に住んでいる利用者へのサービス提供でも送迎減算は適用されますか?
A. 送迎減算は適用されません。
事業所と同一の建物に住んでいる利用者へサービスを提供する場合は、代わりに「同一建物等減算」という別の減算が適用されます。同一建物等減算と送迎減算が同時に適用されることはありません。
送迎業務の負担を軽減する方法
送迎減算が適用されるサービスでは、送迎サービスを行うことが基本となりますが、人手不足の事業所にとって送迎業務は大きな負担となり得ます。また、本来ドライバーではないスタッフが運転に大きなプレッシャーを感じることもあります。
送迎の負担を軽減し、安定したサービスを維持するためには、送迎代行サービス(車両運行管理の委託)の利用が有効です。
送迎代行サービスを利用するメリット
代行サービスを利用する場合、事業所側が準備するのは送迎用の車両のみです。
- 煩雑な業務を一任:ルート作成やドライバーの採用・研修、労務管理といった面倒な業務をすべて業者に委託できます。
- 安定的な運行:ドライバーが体調不良で欠勤した場合でも、代理のドライバーが派遣されます。
- 事故対応の負担軽減:万が一事故が発生した場合も、委託業者が事故対応を行います。
- 減算の回避:自社で送迎を行うのではなく、委託業者に送迎を依頼した場合でも、送迎減算は適用されません。
送迎業務が負担であると感じているのであれば、サービスの質を維持しつつ業務効率化を図るために、送迎代行サービスの利用を検討してください。
まとめ:送迎減算を理解し、適切な体制を
送迎減算とは、通所系の福祉サービスで送迎を行わない場合に適用される、片道あたり47単位の減算のことです。通所系のサービスを提供する事業所は、基本的に送迎サービスも提供することを前提とする必要があります。
送迎業務の負担が大きいと感じる場合は、サービスを維持しつつスタッフの負担を減らすために、送迎代行サービスの利用が効果的な選択肢となります。
送迎の実施状況が介護報酬に直結するため、送迎減算のルールを正しく理解し、適切な体制を構築することが重要です。


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